【ラグビーワールドカップ2019】Match 45 防御は最大の攻撃 -イングランド対ニュージーランド-

2011年ニュージーランド大会の決勝、ニュージーランド代表オールブラックスがハカを行うのに合わせて、フランス代表がキャプテンFLデュソトワールを中心に、鋒矢の陣と言うべきか、やじりのような形にフランス代表の選手が並んだオールブラックスへの心理的プレッシャーをかけた。

今回のイングランド代表もそれに習ったのか、フランス代表とは逆に、鶴翼の陣で両サイドからオールブラックスを包み込むような形で圧迫していった。そしてあの、ファレルの不敵な笑み。やってやる、という強い意志がこの時点でイングランドの選手に見て取れた。

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2018年の試合についてこちらに記載した。

この試合でも前半リードを渡したオールブラックスでしたが、今回はノースコアでイングランドの10-0で前半を折り返す。STATSを見てみましょう。

左がイングランド代表。右がニュージーランド代表。

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どちらも2度、ラインアウトを失っているが、ニュージーランドの9回の確保についても、かなりイングランド代表LO陣にせられており、思い通りにラインアウトから展開できたプレーが記憶に残っていない。プレイヤーオブザマッチにも選ばれたLOマロ・イトジェ、LOコートニー・ローズがオールブラックスの弱点となり得る唯一の箇所を徹底的に突いた

もう一つ、このSTATSから読み取らなければならない点がある。イングランド代表にはラインアウトの機会が20回もあったということだ。つまり、ライン際を走っていたランナーが押し出されたという場面もあったと思うが、それ以上に記憶に残っているのは、オールブラックスのBK陣が自ら意図的にタッチへ蹴っていた、ということです。特にFBボーデン・バレットにその傾向が強く感じられたのは、普段の彼であれば、相手ディフェンスの穴を瞬時に見つけ、あっという間にトップスピードになる快速でイングランドディフェンスを切り裂くことへチャレンジするはず、という期待がわたしの中に大きくあったからだと思います。J SPORTS解説の沢木さんもオールブラックスは蹴らないで自陣から展開していった方が良い、と仰っていましたが、僭越ながらわたしもそう感じずにはいられませんでした。

敢えて相手の強みであるラインアウトからのアタックを差し上げる必要が果たしてあったのか。これは当初からのゲームプランだったのか、選手たちのとっさの判断だったのか。ゲームプランだとしたら、完全にイングランド代表のラインアウト能力を見誤ったこととなりますし、選手の判断ということであれば、それだけイングランド代表の前へ出る圧力にすごみがあったということでしょう。

もう一つ、STATSを見てみたい。ターンオーバーの数である。

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オールブラックスはFLサム・ケインをリザーブに置いたが、そのせいかイングランド代表に前半から相当ボールに絡まれていたし、イングランドボールへの働きかけが充分ではなく、かなりの時間をアタックされていた。前半はイングランド代表が62%のポゼッションを獲得していた。FLカリー、FLアンダーヒルは言うまでもないが、やはり印象的だったのはLOイトジェ。ラインアウトのスチールもこの3回に含まれているだろうが、長い腕を使い下のボールにも喰らいついていた。

前半から飛ばしに飛ばしたイングランド代表であったが、その割にオールブラックスは1トライ、1ペナルティゴールを許したのみで、解説の沢木さんが感嘆されていましたが、オールブラックスの規律への意思の強さには感服しました。

後半もイングランドの勢いは衰えず、キックではWTBセブ・リースの背後を集中的に狙いことも徹底されてました。そこに正確に蹴られるSOジョージ・フォードのキックスキルもお見事。準々決勝で見せたようなキレキレのランはイングランドディフェンスの前に影を潜め、狭い範囲でステップを切って小さなゲインをするのが精一杯に見えました。チャンスボールがリースの手に渡った際にも、ボールをキープして我慢するのではなく、フィフティ・フィフティのオフロードを実行してしまい、結果としてイングランドに渡してしまう、という経験の無さを露呈していました。追いかける展開で、大体の戦術が有効的でない、という時に、ベテランの判断が必要だったのではと考えてしまう場面でした。WTB/FBベン・スミスが必要だったとわたしは思ってしまうのです。

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これまでのプール戦や準々決勝、もしくはそれ以前のテストマッチの全てが、この試合の布石だったのかもしれません。ワールドカップの中でも選手を入替え、ポジションを替え、としてきたイングランド代表に対し、南アフリカ代表スプリングボクスアイルランド代表との試合と、選手も戦術も大きく変更せず、いつも通り相手に合わせる横綱相撲を取った、オールブラックス。準決勝でオールブラックスと対戦することを想定して数年間準備してきたイングランド代表、そのHCエディー・ジョーンズ、そして課せられたハードトレーニングを実施してきた選手たち。

日本代表の選手が、準備やプラン、そしてそのプランの遂行、という表現を多用していましたが、それはエディー・ジョーンズHC時代からのレガシーだったのかもしれない、とこの試合を見て改めて考えたしだいです。

名将がHCとしてワールドカップを制するまで、あと1勝。